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Brand Heritage ブランド・ディクショナリー

時代を超えて、世界の人々に愛され続けるブランド。その歴史は、伝説そのものである。革新的なアイディア、斬新なクリエーション、職人による卓越した技術etc.。今に受け継がれるファッションブランドのヘリテージをご紹介。

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Vol.25 LANVIN

History ヒストリー

Items キーアイテム&偏愛アイテム

「母と娘の愛」から生まれた、世界最古のクチュール・ブランド

 優雅なベルエポックの文化が花開き、高級な仕立て服に身をつつんだ多くの女性たちで華やいだ19世紀末パリ。ここにひとつのブランドが誕生した。その名は「メゾン・ド・ランバン」。帽子の飾り付けを学んだジャンヌ・ランバンが1889年、パリ・フォーブルサントノレ通りに帽子のブティックを構えて創設した「ランバン」だ。移り変わりの激しいモード界にあり、世界で最も長い歴史をもつクチュール・ブランドとして今もなおTOPモードにその名を刻むランバン。だが誕生のきっかけは、意外にも現代を生きる私達のごく身近にあった。それは「母が娘に贈る愛」。帽子デザイナーだった母ジャンヌが、愛娘マルグリット誕生を機に愛を込めて捧げた帽子や服。それがクチュール・ブランド、ランバンの始まりだ。

 ジャンヌが娘のために手作りしたワードローブは、デリケートであどけない洗練されたコレクション。ゴールドボタンのシンプルなブレザー、巧みなふくらみのある袖なしワンピース……。大人の女性をもうらやむ美しいワードローブは、やがて帽子の顧客だった女性たちの間で評判となり、「自分の娘にもランバンの服を」と依頼が殺到する。顧客の声に応え、マルグリットが10歳を迎えた1908年には子供服部門を設立。続く1909年には婦人服部門を設立し、洗練されたパリの女性たちの間でランバンのウェアの人気は爆発的にブレイクすることになる。その後、娘マルグリットは結婚しマリー・ブランシュ・ド・ポリニャック伯爵夫人となるが、1947年に母ジャンヌが他界するまで生涯ミューズであり続け、クリエーションの源となった。数々のオートクチュールメゾンが生まれたこの時代、とりわけランバンが優雅と気品、そこはかとない優しさを放つ理由。それは誰を以ってしても超えがたい「母が娘に贈る愛」の深さからに他ならない。

 さらなる特筆すべき「ランバン」の輝かしい軌跡。それはジャンヌ・ランバンがフランス政府から1926年に「レジヨン・ドヌール シェバリエ」を、続く1938年に女性で初めて「レジヨン・ドヌール オフィシエ」を受勳したこと。フランスの文化勲章に当たる章の受勳は、ジャンヌの功績が“ファッション”としてのみならず、フランスの“文化”として国家に認められたことを物語っている。1909年の婦人部門設立を皮切りに、インテリア、スポーツウェアのラインを立ち上げたジャンヌは、1925年に香水部門を、1926年には紳士部門を設立。続く1927年には名香として今も知られる、娘マルグリットに捧げた香水「アルページュ(フランス語で和音の意)」を発表。以降もコスメティック、毛皮、ランジェリーとジャンルを広げ、誇り高きフランス人の美意識とその奥行きの深さを、「ランバン」というひとつの「王国」を通じ、世界中の人々に示した。

 ジャンヌの死後もその栄光は引き継がれ、J.F.クラエ、クロード・モンタナらがデザイナーを引き継ぎ、オートクチュール界最高の栄誉「デ・ドール賞」を次々授賞。さらに2001年には「ギ・ラロッシュ」「イヴ サンローラン リヴ ゴーシュ」で研鑽を積んだ、モロッコ・カサブランカに生まれのアルベール・エルバスがレディースのクリエイティブ・ディレクターに就任。ジャンヌによって生み出された「ランバン」の世界を100年以上の時を超えて見事に蘇らせ、喝采を浴びた。2006年からはメンズのアーティスティック・ディレクターとなり、メンズのディレクションもスタート。続く翌2007年1月にはジャンヌも授章した国家勲章「レジヨン・ドヌール シェバリエ」を受勳する。

 ジャンヌからアルベールへ受け継がれた「ランバン」のヒストリー。アルベールは2012年春夏、女児服のコレクション「ランバン・プティット」を発表する。母ジャンヌが娘マルグリットに贈った子供服は、世紀を超えてアルベールの手により新たに蘇る。

写真:1930年に撮影された「ランバン」の創設者、ジャンヌ・ランバンのポートレート。フランス文化の担い手として国家勲章を受勲したジャンヌ。パリ装飾美術館には彼女の部屋がそのまま再現された展示もある(1)。ファッションのキャリアのスタートは帽子から。1910年にジャンヌが描いた帽子のデッサン画。「飾り立てのない、洗練された豪華さ」を称えたデザインで評価を得た(2)。1919年にジャンヌが発表した帽子(3)。ジャンヌの愛娘マルグリット。当時、時代の寵児といわれた芸術家ポール・イリブはジャンヌとマルグリットの写真をもとにイラストを描き、装飾家アルマン・アルベール・ラトーは香水「アルページュ」にこの肖像をあしらった。今でもこの肖像はメゾンを象徴するアイコンとなっている(4)。アルベール・エルバスが披露した、ランバン2011-12秋冬レディースコレクション。ちなみにパリ・フォーブルサントノレ通りのランバン本店は、1889年の開店以来、移転したことがない。まるでジャンヌからアルベールへ、時代を超えて受け継がれるランバンの世界を象徴しているかのよう(5)。クリエイティブ・ディレクターのアルベール・エルバス。12星座はふたご座(6)。

text:Miki Yoshii photo:LANVIN

 
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